冠動脈の場所・働きの解説

冠動脈と心臓の病気。心臓への酸素供給のメカニズムの解説。

◆冠動脈の場所・働きの解説(もくじ)

◆第2講~冠動脈とは?

 心臓は肺や全身にたくさんの血液を送り届けたり、全身を回ってきた血液を受け入れたり、一生懸命僕たちのからだの為に働いてくれていることが良くわかったよ。
でもね、体中の細胞が酸素や栄養を必要としているのに、心臓くんは酸素や栄養って必要としないのかなぁ?
僕なんか、そんなに休まずに動き続けていたらすぐにおなかがすいてしまうよ。

 そうだね、前回は心臓の仕組みと働きについてお勉強したけれど、心臓は体中の細胞が元気に活動できるように毎日一生懸命働いているんだったよね。
ただ、心臓自体もたくさんの細胞の集まりだから、やっぱりポンちゃんが思うとおり栄養や酸素を必要とするんだ。
だからね、心臓はものすごいスピードでたくさんの血液を循環させることができるように自分自身の栄養や酸素を補給する冠動脈という独自のルートを持っているんだよ。

 冠動脈?

 そう冠動脈(かんどうみゃく)。
冠動脈は冠状動脈(かんじょうどうみゃく)とも呼ばれているんだけどね。
冠動脈は心臓がしっかり働き続ける為に酸素や栄養を供給する心臓専用のとっても重要なライフラインなんだ。

 冠動脈っていったいどこにあるの?

 よし、では今日は冠動脈の場所は心臓のどの部分にあるのか?そして冠動脈が心臓にどのように酸素や栄養を補給しているのかについてまずはチェックしていくことにしよう!

◆冠動脈の場所ってどこらへんにあるの?

 ねぇドクター。心臓に酸素や栄養を送り届けたりする冠動脈は心臓のどこらへんにあるの?

 冠動脈の位置についてだね。冠動脈の位置を確認するにはもう一度心臓の構造図を確認してみるとしよう。
心臓の構造を確認すると心臓からは大きな2つの動脈が出ているのがわかるよね。

 動脈はどこかなぁ…うん、なんとなく赤い色をしている大動脈となんとなく青っぽい色をしている肺動脈のことかな?

 そうだね。右心室から血液を肺へ送り出している図では青っぽい色をしている肺動脈と、左心室から血液を全身へ送り出している赤っぽい色をしている大動脈。この2つの動脈の中で酸素がたっぷり多く含まれている方の動脈の根元から冠動脈は枝分かれしているんだよ。

 ということは?う~ん大動脈だったかなぁ?

冠動脈の場所(イラスト図)

 正解!肺でガス交換が行われた後の酸素をたっぷりと含んでいる血液が流れている大動脈の根本が冠動脈の枝分かれする場所なんだよ。

心臓は全身に酸素や栄養素を送り込むために自分自身を収縮したり拡張したりしながら血液を供給しているんだったね。でも心臓自身が活動を続ける為には他の臓器や細胞達とやはり一緒で「酸素」「エネルギー源」が必要となるんだ。
特に心臓は大きなポンプを2つ持っていて大量の酸素を消費する臓器でもあるため、冠動脈(冠状動脈)と呼ばれる心臓を専門に養う血管が存在しているんだよ。

※冠動脈は大動脈の根元から枝分かれしている

◆冠循環とは心臓の血液供給システムのこと

心臓の動脈の中で酸素がたっぷり含まれている血液を全身に送り届ける血管は大動脈だったね。

そして冠動脈の場所はね、その栄養たっぷりの酸素を受けられるように大動脈の根元にあるんだ。

心臓はね、大動脈に送り届けられる酸素の一部を冠動脈にも流し込んで冠動脈という独自のライフラインの中で酸素や栄養を補給しているんだよ。

だからポンちゃんの答えは正解だね。

 やった~!

※心臓は大動脈へ送り届ける血液の一部を冠動脈にも届けている

 このように心臓が冠動脈から酸素や栄養素となるグルコース(ぶどう糖)を得ることを「冠循環」と呼ぶんだよ。

※心臓が冠動脈から酸素や栄養素を得ることを「冠循環」と呼ぶ

◆脳や心臓は大量の酸素を消費する

 大動脈の根元部分から冠動脈が出ている。そして冠動脈は心臓にエネルギーを送り届けてくれいる。これで心臓が元気に活動できる意味が何となくわかってきた気がするな。

 そうだね、実際に心臓は休まずに動き続ける必要がある為、とても大量の酸素を消費する筋肉でもあるんだよ。
また心臓と同じように休むことなく働き続けている組織には「脳」がある。
脳は心臓と同様に休まず動き続けている組織だけど、脳と心臓は人体の組織の中でも特にたくさんの酸素を必要とする組織なんだ。
その為、この冠動脈からの酸素の補給はとっても大切であることがわかるね。

 冠動脈ってえらい!

※心臓は大量の酸素を消費する

◆心臓を包み込むように広がる冠動脈「回旋枝」と「前下行枝」

冠動脈は大動脈の根元から2つに分岐して心臓を覆うように血管が包んでいるんだよ。

この2つに冠動脈は心臓の右側向かって分岐した冠動脈を右冠動脈、左側に分岐した冠動脈を左冠動脈と呼ぶ。

また、この左側に分岐した左冠動脈は更に2つに分岐して「回旋枝(かいせんし)」「前下行枝(ぜんかこうし)」に枝分かれしているんだよ。

心臓・冠動脈の図

 冠動脈は心臓の表面部分にたくさん広がっているんだぁ。

 そうだね、心臓を包み込むように広がる冠状動脈の先端部分は「心筋」と呼ばれる筋肉の壁の内部に入り込んでいて酸素やグルコースを心臓へ送り届けているんだ。

※左冠動脈は「回旋枝」と「前下行枝」に枝分かれする

◆血流量が低下する原因とは?

 ねぇドクター。心筋梗塞や狭心症って動脈血管が詰まっちゃうから起きる病気なんでしょ?
もし冠動脈がつまっちゃったら、やっぱり心筋梗塞になったりするの?

 冠動脈もひとつの動脈に変わりないからね。もちろん冠動脈が詰まったり、冠動脈を流れる血流量がなんらかの原因によって流れが停滞したりすると心筋梗塞などの症状に限らず様々な病気を発症する可能性があるんだよ。

 でもね、歳をとっていくと血管が詰まりやすくなるっていうでしょ?
「血液サラサラになる食事レシピ♪」とか、血液をサラサラにするサプリメントとかいっぱいでてるもん。
歳をとるとやっぱり血管って詰まりやすくなるのかなぁ?

※冠動脈の血流の流れが弱くなると様々な疾患を引き起こす

◆血管を詰まらせるプラークって何?

血管造影検査などによって冠動脈の血管をモニターに映し出してみると、冠動脈の一部分の色が薄くなっていたり、途切れて見えるような時がある。

これは、冠動脈が何らかのトラブルを発症している合図とも言えるんだ。

歳を重ねるとね、冠動脈の血管の太さは一般的に少しずつ細くなってくることが解ってきているんだよ。

尚、冠動脈の血管が細くなる第一の原因は、血管内に蓄積するプラークと呼ばれる脂肪組織が溜まりこむことが原因と考えられているんだ。

※プラークの蓄積で血管が細くなってくる

 プラークって何?

 プラークはね、簡単に言うと脂肪の塊のこと。
プラークは血管の内側部分に付着する性質があって、放っておくとたくさん溜まりこんでしまう。
血管の血流そのものを止めてしまうこともあるやっかいなものなんだよ。

※冠動脈が細くなる原因のひとつがプラーク

◆冠動脈に番号がついているのはなぜ?

 ねぇドクター。冠動脈の図にのっている番号って何を表しているの?

 うん、冠動脈の図に記載されている番号はね、右と左に枝分かれしていく冠動脈をエリア別に分けた番号の指標なんだよ。
例えば、⑥番の冠動脈に異常を発見。と言えば、その6番の冠動脈の場所がわかっていると、そのエリアの異常に対する対処がしやすくなるよね。

 それで冠動脈には番号がふってあるんだぁ。

冠動脈の番号図(イラスト図)

 冠動脈の番号は、2本の冠動脈それぞれに番号が決まった番号(記号)が振り分けられていて右冠状動脈は1番~4番(4AV・4PD)まで、左冠状動脈は5番~15番までの番号が血管の区域ごとに分類されているんだよ。
尚、左冠状動脈は先程説明したとおり「前下行枝」「回旋枝」に枝分かれしていて、前下行枝は6番~10番まで、回旋枝は11番~15番までの番号がつけられているんだ。

冠動脈の番号と分類一覧表
①右冠動脈
近位部
②右冠動脈
中間部
③右冠動脈
遠位部
4AV
右冠動脈後側壁枝
4PD
右冠動脈後下行枝
⑤左冠動脈
主幹部
⑥左前下行枝
近位部
⑦左前下行枝
中間部
⑧左前下行枝
遠位部
⑨第1対角枝⑩第2対角枝
⑪左回旋枝
近位部
⑫鈍縁枝⑬左回旋枝
遠位部
⑭後側壁枝⑮後下行枝

 冠動脈は心臓を養う大切な血管なんだよね。だから病気が発生した時に迅速に対処できるように細かく分類されているんだね。

※冠動脈はエリアを選別しやすいように番号がふられている

◆血流量のコントロール方法

心臓は、何もしていない状態でも常時動いているよね。だから心臓はたくさんの酸素を消費する。

但し運動中になれば心臓の拍動は更に早く多くなるから、もっともっとたくさんのエネルギーと酸素が必要になってくる。

この時、冠動脈は自らの血管の幅を広げて血流量が多くなるようにコントロールできる予備能力を持っているんだ。

この心臓の予備能力は「冠血流予備能」と呼ばれているんだよ。

 なんだか難しい名前だなぁ・・・・

※運動時など大量の酸素やエネルギーが必要な場面では冠動脈は自ら血管の幅を広げる(冠血流予備能)

 ただしね、この冠血流予備能は年齢の増加に伴って予備能力も徐々に低下していくことが明らかになっている。
その為、歳を重ねるごとに軽い運動であっても息苦しさを感じやすくなっていくんだ。

 歳をとるたびに走ったりするのが苦しくなるのは予備能力が少しずつ弱ってくることも関係してたんだね。

 うん、この予備能力の低下は誰でも加齢に伴って発症する現象のひとつだから、何年かぶりに激しい運動をするような場合は少しずつ心臓への血流量を増加していくためにもしっかりとした準備運動を行なうことが大切なんだよ。
特に高齢者になってからの運動は冠血流予備能の低下現象によってどうしても心臓への負担が大きくなるから、無理をせずに少しずつ運動を継続していくことがポイントになるんだね。